クリニックブログ

アルツハイマー病の血液バイオマーカー

2025年09月24日

認知機能低下が認められる場合に、原因がアルツハイマー病であるか鑑別する必要があります。現在脳脊髄液検査、PET検査が承認されていますが、検査リスク/高額といった制約があり、より広く検査の機会が得られるよう血液バイオマーカーの測定試薬が求められるところです。
今年になって「血漿中の217位リン酸化タウ蛋白(pTau217)とベータアミロイド1-42の比率」を測定する検査試薬がアルツハイマー病の補助診断用医薬品としてFDAに承認されており、国内でも先日承認申請されました。

臨床試験では、こういった血液バイオマーカーが発症前のアルツハイマー病の特定に利用され、治療薬や生活習慣改善による発症予防の検証もおこなわれています。
国内におきましても高齢化で認知症患者の増加が予想され、これらの治験や臨床研究の臨床応用が期待されています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37202517/

なお、杉並区では「物忘れ予防検診」を実施しています。
対象:50歳から70歳までの区民の方(令和7年度の対象者:昭和30年4月2日~昭和51年4月1日に生まれた方)
期間:令和7年10月1日(水曜日)から令和8年2月28日(土曜日)まで(検診実施医療機関の休診日を除く)

老化と健康寿命

2025年05月18日

老化/加齢と高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病には関連性があり、生活習慣病の有無は健康寿命の長短に影響すると考えられています。

老化は避けられないものですが健康寿命には個人差があり、個々の老化スピードは生活習慣改善により抑制できる可能性があります。同じ歴年齢であっても、若さを保っている方がいる一方で、年齢以上に老化している方がいるように、暦年齢と生物学的年齢にはギャップがみられます。

生物学的年齢を知るにはいくつかの方法が提唱されていますが、DNAメチル化(エピゲノム)情報に基づく生物学的年齢予測モデル(エピジェネティック・クロック)が、その信頼性の高さから国内外で老化研究に利用されています。The use of DNA methylation clock in aging research – PMC

エピジェネティック・クロックは2013年以降盛んに老化研究に利用されていますが(第一世代クロック)、その後健康リスクや生理的状態の違いに関連する遺伝子CpGサイトのメチル化パターンから生物学的年齢が推定できるようになり(第二世代クロック)、より高い精度で加齢性疾患のリスクなども踏まえた生物学的年齢を推定できるようになりました。さらに現在では、ダニーデン研究により得られたデータ利用することにより、生物学的年齢のみならず老化スピードも推定する第三世代クロックが利用されています。DunedinPACE, a DNA methylation biomarker of the pace of aging – PubMed

エピクロック®テストは、第二世代クロックのPhenoAgeをベースに日本人エピゲノムデータを学習させ日本人に最適化したクロックで、老化スピードも評価可能です。Tomo: Transfer elastic Net for developing epigenetic… – Google Scholar

エピクロック®テストでは、得られたエピジェネティックス情報から生物学的年齢、老化スピードのみならず、老化に関連する運動機能、呼吸肺活量、テロメア長や血中シスタチンCレベル、血中レプチンレベル、血中PAI-1レベルといった加齢性疾患バイオマーカーや、喫煙暴露レベル、アルコール暴露レベル、フレイル・ロコモリスクといった生活習慣に関連する健康指標を評価することができます。Methylation risk scores are associated with a collection of phenotypes within electronic health record systems – PubMed DNA methylation age – environmental influences, health impacts, and its role in environmental epidemiology – PMC

健康寿命を延伸するためには、現在の生物学的年齢と老化スピード、それらに関連する健康指標の現状を知ることによって、今後どのような生活習慣をとることが望ましいかアクションプランを考え、実行することが肝要です。定期的なエピクロック®テストから得られる情報は、健康寿命延伸のためのPDCAサイクルを回す一助になると思われます。

エピクロック®テスト 生物学的年齢検査 一般向け_生物学的年齢検査_エピクロックテストのご説明.pdf – Google ドライブ 老化時計は巻き戻せる 人生100年、終活より「老活」 – 日本経済新聞

シニア世代の健康寿命

2025年05月08日

健康寿命は、「健康上の問題で日常生活に制限を受けることなく生活できる期間」を指します。昨年厚労省発表の令和4年値は男性72.57年、女性75.45年でした。人生100年と言われている昨今、健康寿命とのギャップを短くしたいところです。

最近の関連論文ではNIPPON DATA90を利用して、65歳時における健康寿命は非感染性疾患/生活習慣病の有無で約10年間の開きがあることを報告しております。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39805597/

高血圧、肥満、喫煙、糖尿病の65歳男性では健康寿命は12.9年/77.9歳であり、それら生活習慣病のない65歳男性では22.6年/87.6歳で9.7年間の開きがあります。

同様に、65歳女性では、それぞれ16.2年/81.2歳、26.3年/91.3歳で10.1年間の開きがあります。

食事、運動、睡眠、ストレス管理、禁煙など生活習慣を改善し、年に1度健診を受けながら高血圧、肥満、糖尿病の早期発見・治療をすることで健康寿命の延伸が期待できるかと思います。https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/

早朝高血圧徹底制圧宣言2025 日本高血圧学会

2025年04月24日

高血圧は、循環器疾患、認知症、慢性腎臓病などのリスク因子ですが、特に朝の家庭血圧は循環器疾患の発症リスクと強い関連があります。また、早朝血圧の管理が健康リスク低減に重要であるとされています。

高血圧のコントロールは未だ十分ではなく、高血圧患者4300万人のうち、良好にコントロールされている人の割合は27%に過ぎません。さらに、高血圧治療中の患者の70%で、朝の家庭血圧が130/80以上である報告もあります。

朝の家庭血圧を指標にして、減塩、ウォーキング、適正体重、睡眠、ストレスマネジメントといった生活習慣の実行が肝要です。Topics & 新着情報|日本高血圧学会 816_1.pdf

高齢者向けRSウイルスワクチン

2025年04月23日

RSウイルスは風邪症状を引き起こすウイルスの一つです。多くの場合1-2週間で自然治癒しますが時に重症化することがあります。特に高齢者では感染・発症すると重症化、入院のリスクがありますが、ワクチン接種が感染予防に有用です。

ワクチンは現在3種類あり、国内ではそのうち2種類が承認されています。US CDCは75歳以上の高齢者、60歳から74歳で重症化リスクのある方に接種を推奨しています。

重症化リスクとして心不全、陳旧性心筋梗塞といった慢性心血管疾患、COPD、間質性肺炎といった慢性呼吸器疾患、末期腎不全/透析治療中、CKD合併糖尿病/インスリン治療中糖尿病、肝硬変といった慢性肝疾患、BMI:40以上の肥満、特養老人ホーム居住者などがあげられています。RSV (Respiratory Syncytial Virus) Immunizations | CDC

2種類のワクチンのうちアレックスビーは、RSウイルスサブタイプA由来のリコンビナント抗原とアジュバントで構成されたワクチンです。アブリスボはサブタイプA及びB由来のリコンビナント抗原で構成されたワクチンで、アジュバントを含有しません。他のワクチンとの同時接種可です。

CDCは現時点で毎年接種を推奨しておりません。承認時、持続性に関してデータは得られておらず、追加接種の必要性について将来検討されるとのことです。また、3種類のワクチンで優先度をつけておりません。