クリニックブログ

フレイル予防、生活習慣病管理と健康寿命

2020年03月27日

フレイル・高齢期に予備能低下により健康障害をきたしやすい状態・健康と要介護の中間の状態を予防することは、脳心血管病を予防し健康寿命を延ばす要点の一つです。

フレイルには、ふらつき・転倒、食欲低下など身体的な側面と、記憶障害、抑うつなど精神的な側面があります。高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など生活習慣病の管理がフレイル予防にもつながります。

その際、食事、運動、薬物治療等の管理・治療目標は、患者さん個々人の包括的なリスク評価、年齢、生理機能などを鑑みそれぞれの患者さんにとって最適の目標を設定する必要があります。

例えば、糖尿病の食事療法につきましても、65歳以上では目標体重(BMI 22-25)、総カロリー摂取量に幅をもたせ、認知機能低下や転倒につながる低血糖を回避する妥当な血糖コントロール目標を設定することが治療ガイドラインでも勧められています。

特に高齢期では、一律な治療・管理目標ではなく、それぞれの患者さんに最適なオーダーメイド医療が肝要です。

肥満と脳心血管病予防

2020年03月19日

肥満は脳心血管病のリスクファクターの一つです。高血圧、脂質異常症の有病率が最も低いBMI=22に比較し、肥満判定基準の25になると内臓脂肪の過剰蓄積によりそれらの疾患の有病率が2倍になります。

体重減少は時に容易ではありませんが、肥満者(内臓脂肪過剰蓄積)では、2-4%の体重減少でも、糖尿病、高血圧、脂質異常症が改善することが知られています。
そのためまず3%の体重減少を目指し、生活習慣を改善することがすすめられます。

足の動脈硬化

2020年03月08日

閉塞性動脈硬化症は、足の動脈硬化によりおこります。典型的な症状はウォーキングをすると足に痛みや疲労を感じ、休むと回復します。症状があるのは50%以下といわれており、喫煙者、糖尿病、高齢者、透析患者、脳卒中、心筋梗塞既往者などハイリスクな方は定期的な検査がすすめられています。

簡便な検査としてABI(足関節上腕血圧比)がありますが、ABI値が1.00未満の場合は疑い例、0.90未満で閉塞性動脈硬化症と診断します。逆に1.4を超える場合には石灰化により硬化した動脈と考えられ冠動脈、頸動脈の評価が必要です。

症状のある方、ハイリスクな方はかかりつけ医に相談をおすすめします。

CAVI/ABI装置

動悸と心不全、脳梗塞

2020年03月05日

動悸の原因となる不整脈の一つに心房細動があります。心房細動の患者さんの95%以上が60歳以上であり、80歳以上の高齢者の有病率は10%といわれています。心房細動は心不全のリスクファクターであり、逆に心不全では心房細動を発症するリスクが上がります。。

心房細動では動悸などの症状がない場合もありますが、症状のある・なしにかかわらず脳梗塞を発症するリスクファクターと考えられています。心房細動では左心房に血栓ができやすく、心臓から血栓が脳血管に流れて塞栓を起こす場合、広範囲な脳梗塞を発症する場合があります。

心房細動には、発作的な心房細動を繰り返し起こす場合もありますが、発作性心房細動も持続性の心房細動同様に脳梗塞のリスクといわれています。

脳梗塞は要介護・寝たきりの主要原因であり、健康寿命を短縮します。

高齢化社会において心房細動の患者さんは増加すると予想され、早期診断・治療は健康寿命延伸のキーの一つです。

VPD 風しんへの対応

2020年03月04日

風しんはワクチンで予防できる病気(VPD)ですが、感染研疫学情報によりますと昨年も国内では2,306名の報告があり、先天性風疹症候群も4名の報告がありました。

先天性風疹症候群は、免疫のない女性が配偶者などから妊娠初期に風しんに罹患すると、胎児が風しんウイルスに感染して出生児が先天的に白内障、心疾患、難聴などを発症することを指します。

杉並区では、風しん抗体価測定、予防接種の助成をしています。妊娠をご希望される女性、同居者など対象者の方は抗体価検査をおすすめします。https://www.city.suginami.tokyo.jp/res/projects/default_project/_page/001/004/811/fusinannai310403.pdf

また、国の対策として、特に抗体保有率が低い昭和37年4月2日から昭和54年4月1日までの間に生まれた男性に抗体価検査、予防接種をしています。区が発行したクーポン券をお持ちの方は抗体価検査をおすすめします。https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kenko/yobouseshu/1050478.html

当院の予防接種についてはこちらをご覧ください。

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用効果

2020年03月02日

肺炎球菌ワクチンはインフルエンザに罹患した際に肺炎球菌性肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症の併発を予防すると考えられています。

比較的最近のメタ解析論文*では、高齢者において肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザワクチンに併用した場合、肺炎、死亡抑制についてそれぞれ15%、19%の相加効果が報告されています。

杉並区では高齢者 肺炎球菌定期ワクチンの公費助成をしています。
令和元年度対象の方は今月いっぱいが助成期間とまりますので、未接種の方は接種をおすすめします。

詳しくは杉並区ホームページをご覧ください。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kenko/yobouseshu/1004809.html

*Expert Rev Vaccines. 2018 Jul;17(7):653-663. doi: 10.1080/14760584.2018.1495077. Epub 2018 Jul 16.
Effectiveness and safety of dual influenza and pneumococcal vaccination versus separate administration or no vaccination in older adults: a meta-analysis.
Yin M1, Huang L1, Zhang Y1, Yu N2, Xu X1, Liang Y1, Ni J1.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29961353