血圧に関するお知らせ 日本高血圧学会
2024年07月08日
健診での血圧について様々な情報があり混乱していることから、日本高血圧学会より改めてお知らせが出ておりますので要点をまとめ、一部追記しました。Topics & 新着情報|日本高血圧学会 (jpnsh.jp)
高血圧症の診断基準は「上の血圧が140以上、下の血圧が90以上」です。
これは我が国のデータで脳卒中をすでに起こしやすくなるからです。この基準は世界的にも合意されています。なお、家庭血圧での診断基準は135/85以上です。
「上の血圧が160以上、下の血圧が100以上」の場合には、すぐに医療機関を受診するようにお薦めします。
脳卒中を起こしやすいからです。なお、胸痛、麻痺が起きているといった緊急の場合を除き、医療機関の外来診療時間内に受診ください。
脳卒中の既往がある、心臓・腎臓の病気、糖尿病がある方は、140/90以上でもすぐに医療機関を受診してください。
「上の血圧が140-159、下の血圧が90-99の場合」には、1か月程度生活習慣を見直して血圧が下がらなければ医療機関を受診することをお薦めします。
なお、それぞれの患者さんにあった生活習慣の見直しを見つけるため、早めに医療機関受診をご検討ください。
家庭血圧を測定の上、生活習慣改善として、体重を減らす、適度な運動、アルコールを減らす、塩分を減らす、野菜と果物をとるよう、取り組んでください。
食塩と高血圧
2024年04月05日
高血圧治療の際には生活習慣の改善が必須ですが、そのなかで減塩も重要で大きな効果も期待できます。食塩は、生きていくために必須のミネラルですが、摂りすぎると体液・血液量が増加し血圧が上昇します。日本人の1日の平均食塩摂取量は10グラムで、高血圧の際の減塩目標は6グラム以下です。
とはいえ食塩量は目に見えませんので注意しづらい点ではと思います。そのため尿中のナトリウム、クレアチニン値を測定することで、1日の概算食塩摂取量を計算することができます。まず現状を認識し、食習慣を思い出して、どのように減塩するか考えていただきたいと思います。
具体的には、料理の際の調味料として加える食塩を減らし、うす味に慣れるとともにスパイス、出汁などで味を調えます。塩コショウや塩を含む調味料よりは、塩とスパイス・調味料が別のものを使い、塩の量を減らします。
同時に、塩味の濃い外食や、総菜品を減らします。また、インスタント麺、漬物、塩ざけなど食塩を多く含む加工品を減らします。ハム、練り物、パンなども塩分量が比較的多いので注意が必要です。
過去には長期保存するために食塩を多く含む食品がありました。みそ、しょうゆなどの調味料も塩を多く含みますし、食塩そのものを味を良くするための調味料として多く使用しがちです。加工食品には食塩の含有量が表示されていますので、興味を持ってご覧いただきたいと思います。
高血圧治療補助アプリ
2023年10月27日
高血圧の治療には、生活習慣の修正が必須です。
一日6gの減塩、BMI24以下まで体重減、一日7,000歩程度のウォーキング、6-7時間の睡眠、ストレスマネジメント、一日20-30g以下まで節酒、禁煙などに関連する生活習慣を見直し、必要があれば修正することで血圧が下がります。まず関連知識を確認し、その後実践、習慣化することが肝要です。
とはいえ、現実には生活習慣を変えていくことは容易ではなく、習慣化は更に困難な場合があります。
そこで昨年より、生活習慣の修正を補助してくれる「高血圧治療補助アプリ」が保険適応になっています。
このアプリは、患者さんが入力した家庭血圧、実践した行動の情報などを基に、一人ひとりの患者さんに合わせて修正した行動の習慣化に必要な取り組みを提示します。
臨床治験では、多施設にて本態性高血圧患者を無作為に介入群(生活習慣修正指導とアプリ使用)と対象群(生活習慣修正指導)にわけアプリの有効性を検証したところ、介入群(起床時収縮期家庭血圧147+-13.3, n=167)、対象群(149.3+-12.4, n=158)において、12週間後あるいは中止時点にて介入群(136.7+-13.4)、対象群(143.7+-13.6)と、それぞれ9.7+-11.2mmHg, 5.3+-10.1mmHg低下し、アプリ介入の有効性が示されました。
「高血圧治療補助アプリ」は6か月間のプログラムで、終了後も血圧手帳として利用できます。
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睡眠時間と高血圧
2023年03月09日
睡眠時間は、高血圧、肥満、糖尿病など生活習慣病と関連があるといわれています。
睡眠不足で血圧が上がることは以前が言われておりましたが、睡眠を4時間に制限すると血圧や心拍数が上昇することが報告されており、睡眠不足による交感神経緊張が原因と思われます。
高血圧は、睡眠時間が6時間未満の方で発症頻度が高く、8時間以上を超える場合も頻度が高いことが報告されています。
睡眠時に一定回以上呼吸停止がおこる睡眠時無呼吸症候群と高血圧との関連も指摘されており、睡眠時間と共に睡眠の質とも関連があるようです。睡眠の質の低下は、睡眠時の副交感神経亢進を妨げ、交感神経優位に自律神経のバランスを障害し、血圧上昇をおこすと思われます。
食事、運動とともに生活習慣病対策の一つとして、良質で適度な睡眠時間を得られるように、生活習慣改善をすることも重要に思います。
家庭血圧の測定
2023年02月15日
高血圧の診断・治療には、診察室血圧のみならず、家庭血圧の評価が必須です。診察室では交感神経緊張により血圧が高くなりがちであること、家庭で毎日、長期間測定することでより豊富な情報を得ることができるからです。
家庭血圧測定の際には、上腕にカフを巻くタイプの自動血圧計を使用します。カフは肘にかからないように2~3㎝上に巻き、カフの中央と心臓の高さが一致するようにします。
血圧は、静かで適当な室温(冬は暖房で暖めた部屋)の環境で、背もたれ付きの椅子に足を組まずに座って1~2分安静にした後に測定します。測定中は会話することなく、測定前に喫煙、飲酒、コーヒーなどカフェインを摂らないようにします。
血圧は、朝起床後1時間以内で、排尿後、服薬前、朝食前、座位1~2分安静後に測定します。
起床後測定するのは、交感神経緊張により早朝血圧が高い場合があるからです。また、服薬前で降圧薬の血中濃度が下がったタイミングの血圧を測定します。なお、一般にトイレを我慢しているときには交感神経緊張により血圧が上がり、食後は胃などに血液が集まり血圧が下がります。
血圧は1回か2回測定し、2回測定した場合にはその平均値を記録します。複数回血圧を測定して血圧が下がるのは、血管内皮よりNOが分泌され血管拡張がおこるからと言われています。
夜は就寝前に測定します。飲酒後、入浴後は血管が拡張し血圧が下がります。
家庭血圧の測り方
2021年03月15日
降圧治療の管理目標値は、一般に75歳以下では家庭血圧125/75未満、75歳以上では135/85未満とし、たちくらみや高齢者で脳梗塞などの原因となる過降圧に注意します。
血圧計は、上腕で測定する装置が推奨されます。手首で測定する装置は日々の比較評価はできますが、絶対値が不正確な場合があります。
血圧測定は、朝起床時、排尿後、朝食・服薬前、座位で1-2分安静後に2回測定しその平均を記録します。起床時には交感神経が緊張をはじめますが、過緊張のため血圧が上昇する場合がありモーニングサージと呼ばれます。早朝に脳卒中、心筋梗塞などの心血管イベント発症が多いことにも関連しています。
最近でも早朝勤務前に喫煙習慣のある方々がおられますが、喫煙により末梢血管収縮・血圧上昇、血管内皮障害をおこし心血管イベントのリスクが更にあがります。
また、起床時の血圧測定に加え、就寝前座位1-2分安静後測定します。
なお、一般に血圧は精神状態、運動、睡眠不足などで変動しうるものですので、一回の測定値に一喜一憂する必要はありません。血圧の評価は5日以上の平均値を中心に評価します。
急に血圧が上昇した場合には、安静にすることで改善することが多く、慌てず気持ちを落ち着かせることが肝要です。なお、血圧上昇とともに激しい頭痛や視野異常、呼吸困難などがある場合には高血圧緊急症として原因精査・治療が必要です。
高血圧と家庭血圧
2021年03月11日
かつて国内では脳出血の罹病率が高く、半身麻痺など後遺症や早期死亡に苦しむ患者さんやご家族が多くおられました。保健教育による塩分摂取の制限や健診による高血圧の診断・その後の治療といった予防医療が貢献し、罹病率・予後は大きく改善しました。
脳梗塞、心筋梗塞、心不全など脳心血管病予防のためには、血圧管理は現在も重要で、その管理には家庭血圧を中心にしています。これは、家庭血圧が正常域にもかかわらず診察室血圧が高い「白衣高血圧」や、家庭血圧が高血圧にもかかわらず診察室血圧は正常域の「仮面高血圧」の場合があるからです。
高血圧合併症がなければ「白衣高血圧」は経過観察で良いですが、「仮面高血圧」では脳心血管病のリスクが高く、治療が必要です。
高血圧基準は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上としています。
家庭血圧の測定要領を次回ご説明します。