クリニックブログ

帯状疱疹ワクチン

2022年06月23日

帯状疱疹は、神経に潜在するヘルペスウイルスの再活性化により発症します。再活性化の要因は明らかではありませんが、怪我、発熱、免疫抑制状態などがトリガーとなって発症する場合があります。最近では、新型コロナウイルスパンデミックと帯状疱疹発症の関連性が話題になっています。

帯状疱疹は、発症後なるべく早く抗ウイルス薬を内服することで重症化、後遺症を防ぐことができます。

加えて、50歳以上の方ではワクチンで予防することができます。ワクチンには従来型の弱毒生ワクチンとアジュバントを含む不活化ワクチンがありますが、2017年US ACIPの勧告では、不活化ワクチンを優先して推奨しています。

また、2018 CDC MMWRに弱毒生ワクチンと不活化ワクチンの有効性、安全性についてレポートがあります。 Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices for Use of Herpes Zoster Vaccines | MMWR (cdc.gov)

有効性 

不活化ワクチン  30,000人以上を2群に分け、50歳以上を3.2年、70歳以上を3.7年フォローした臨床試験にて、50歳代は96.6%、60歳代は97.4%、70歳以上では91.3%の有効性でした。また、帯状疱疹後神経痛予防の有効性は50歳以上で91.2%, 70歳以上で88.8%でした。

弱毒生ワクチン  50歳代対象の臨床試験では、1.3年のフォローで70%, 別の3.1年フォローの臨床試験では、60歳代で64%、70歳以上で38%の有効性でした。

安全性

不活化ワクチン、弱毒生ワクチンともに、臨床試験において重篤な副反応の頻度はワクチン群とプラセボ群で同等でした。不活化ワクチンでは、通常の生活を妨げるレベル(grade 3)の注射部位反応がワクチン群で9.4%, プラセボ群で3.1%でした。弱毒生ワクチンではgrade 3注射部位反応がワクチン群で0.9%以下でした。稀に全身の発疹、帯状疱疹、免疫低下例で生命を脅かす合併症の報告がありました。

動脈硬化予防の食事

2021年12月13日

動脈硬化を予防し、しなやかな血管を維持するためには、食生活・生活習慣の見直しが不可欠です。動脈硬化学会より勧めらています「ザ・ジャパン・ダイエット」は、伝統的な和食の良いところを取り入れ、減塩にも工夫した食事ですが、最近のNHK「今日の健康」に取り上げられおります。  

動脈硬化の予防に役立つ「ザ・ジャパン・ダイエット」 ポイント・基本の献立例 | NHK健康チャンネル

積極的にとる食品

魚、大豆・大豆製品、緑黄色野菜を含む野菜、海藻、きのこ、こんにゃく

特にさば、いわし、さんまなど青背の魚に多いn-3系多価不飽和脂肪酸、大豆製品に多いn-6系多価不飽和脂肪酸は脂質異常症を改善します。水溶性食物繊維が豊富な大豆製品、野菜、海藻、きのこ、こんにゃくは、コレステロールの吸収を抑えます。

控える食品

脂身の多い肉や動物脂、鶏の卵、砂糖や果糖を含む清涼飲料や菓子、アルコール飲料

動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを増やします。砂糖、果糖、アルコール飲料は、カロリー過多より肥満につながり、中性脂肪が増える原因となります。

主食のごはん、パンには、 水溶性食物繊維を含む未精製の穀類、雑穀、麦を増やします。

果物は水溶性食物繊維やビタミンCが豊富ですので、果糖の少ないかんきつ類やキウイなどがおすすめです。乳製品はカルシウム、ビタミンDが豊富ですが、動物脂を含むので適当な量をとり、生クリームは避けるほうが良いです。

だしや薬味を使うなど味付けを工夫して、減塩・うす味にすることで、高血圧を予防します。特に、高血圧の家族歴がある場合注意が必要です。

在宅勤務、低用量ピルと深部静脈血栓症

2021年11月25日

深部静脈血栓症の危険因子には、長期臥床・長時間座位のような血流の停滞、喫煙のような血管内皮障害、低用量ピル・エストロゲン製剤内服時のような血液凝固亢進があります。一般的には稀な病気ですが、危険因子が重複している場合には注意が必要です。

深部静脈血栓は、骨盤・下肢の静脈におきることが多いですが、起立・歩行・排便などの際に血栓が剥離して肺動脈血栓症をおこすことが稀にあります。

航空機による長時間の移動、災害の際の車中泊の際に発症した例がメディアでも取り上げられ啓発されましたが、5時間以上のテレビもリスクになりうるといわれています。最近では、在宅勤務の際の長時間座位も注意が必要に思われます。

社会の変化に伴い、妊娠機会の減少から女性の生理回数は増加し、月経困難症を和らげるため低用量ピルを内服する機会もあるようです。

下肢深部静脈血栓症の症状は、ふくらはぎの痛み、こむら返り、重苦感などで、浮腫、発赤、下肢圧迫による痛みなどを伴うことがあります。

予防には、在宅勤務中には時々室内を歩いたり、座位でふくらはぎを収縮させるような運動をしたりして、下肢の静脈うっ滞を避けることにあります。むくみがある場合には弾性ストッキングの利用も良いかもしれません。

発症した際には、早期診断・治療により肺動脈血栓症の予防、再発予防が肝要です。

2021ー22年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方

2021年10月08日

感染症学会より今年のインフルエンザワクチンに関する考え方が出ておりますので、まとめました。

2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方|ガイドライン・提言|日本感染症学会 (kansensho.or.jp)

感染症学会は、今年もインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨しており、その理由として、昨年インフルエンザに罹患した人は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されておらず、この状況下で海外よりウイルスが持ち込まれた場合大きな流行を起こす可能性をあげています。

また、今年の秋以降新型コロナウイルスによる新規患者が発生することが予想されている中、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制することも重要とあります。

インフルエンザワクチン接種の時期につきましては、インフルエンザシーズンの時期と現行のワクチン効果の減弱を考慮して、10月末までには実施することを推奨しています。

インフルエンザに罹患した場合の合併症のリスク因子として、6か月以上5歳未満、65歳以上、気管支喘息など慢性呼吸器疾患、心血管疾患、慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患、神経筋疾患、薬剤によるものを含め免疫抑制状態、妊婦、長期療養施設の入所者、著しい肥満、アスピリンの長期投与患者、がん患者をあげ、これら因子を有する人を含め、生後6か月以降で禁忌でない方すべて(因子を有する方々に接する医療従事者や介護者を含む)にワクチン接種を推奨しています。

新型コロナワクチン接種後の心筋炎、心膜炎

2021年09月15日

報道にもありますように、mRNA COVID-19ワクチン(ファイザー製、モデルナ製)接種後、心筋炎、心膜炎の副反応が報告されています。CDCが文書を発出していますのでまとめした。

米国では、新型コロナmRNAワクチン接種後特に若年男性において、心筋炎、心膜炎が報告されています。 心筋炎は心筋、心膜炎は心外膜の炎症であり、感染症やその他のトリガーに反応した免疫システムによる炎症です。

ワクチン接種後の心筋炎は、若年~成人男性の報告が多く、

2回目接種後により多く発症し、

通常、ワクチン接種数日後に発症しています。

大部分の報告で、患者さんは療養に良く反応し、早期に症状改善、通常の日常生活に復帰しています。

症状には、胸痛、息切れ、動悸などがあります。

Myocarditis and Pericarditis After mRNA COVID-19 Vaccination | CDC