クリニックブログ

在宅勤務、低用量ピルと深部静脈血栓症

2021年11月25日

深部静脈血栓症の危険因子には、長期臥床・長時間座位のような血流の停滞、喫煙のような血管内皮障害、低用量ピル・エストロゲン製剤内服時のような血液凝固亢進があります。一般的には稀な病気ですが、危険因子が重複している場合には注意が必要です。

深部静脈血栓は、骨盤・下肢の静脈におきることが多いですが、起立・歩行・排便などの際に血栓が剥離して肺動脈血栓症をおこすことが稀にあります。

航空機による長時間の移動、災害の際の車中泊の際に発症した例がメディアでも取り上げられ啓発されましたが、5時間以上のテレビもリスクになりうるといわれています。最近では、在宅勤務の際の長時間座位も注意が必要に思われます。

社会の変化に伴い、妊娠機会の減少から女性の生理回数は増加し、月経困難症を和らげるため低用量ピルを内服する機会もあるようです。

下肢深部静脈血栓症の症状は、ふくらはぎの痛み、こむら返り、重苦感などで、浮腫、発赤、下肢圧迫による痛みなどを伴うことがあります。

予防には、在宅勤務中には時々室内を歩いたり、座位でふくらはぎを収縮させるような運動をしたりして、下肢の静脈うっ滞を避けることにあります。むくみがある場合には弾性ストッキングの利用も良いかもしれません。

発症した際には、早期診断・治療により肺動脈血栓症の予防、再発予防が肝要です。

2021ー22年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方

2021年10月08日

感染症学会より今年のインフルエンザワクチンに関する考え方が出ておりますので、まとめました。

2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方|ガイドライン・提言|日本感染症学会 (kansensho.or.jp)

感染症学会は、今年もインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨しており、その理由として、昨年インフルエンザに罹患した人は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されておらず、この状況下で海外よりウイルスが持ち込まれた場合大きな流行を起こす可能性をあげています。

また、今年の秋以降新型コロナウイルスによる新規患者が発生することが予想されている中、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制することも重要とあります。

インフルエンザワクチン接種の時期につきましては、インフルエンザシーズンの時期と現行のワクチン効果の減弱を考慮して、10月末までには実施することを推奨しています。

インフルエンザに罹患した場合の合併症のリスク因子として、6か月以上5歳未満、65歳以上、気管支喘息など慢性呼吸器疾患、心血管疾患、慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患、神経筋疾患、薬剤によるものを含め免疫抑制状態、妊婦、長期療養施設の入所者、著しい肥満、アスピリンの長期投与患者、がん患者をあげ、これら因子を有する人を含め、生後6か月以降で禁忌でない方すべて(因子を有する方々に接する医療従事者や介護者を含む)にワクチン接種を推奨しています。

新型コロナワクチン接種後の心筋炎、心膜炎

2021年09月15日

報道にもありますように、mRNA COVID-19ワクチン(ファイザー製、モデルナ製)接種後、心筋炎、心膜炎の副反応が報告されています。CDCが文書を発出していますのでまとめした。

米国では、新型コロナmRNAワクチン接種後特に若年男性において、心筋炎、心膜炎が報告されています。 心筋炎は心筋、心膜炎は心外膜の炎症であり、感染症やその他のトリガーに反応した免疫システムによる炎症です。

ワクチン接種後の心筋炎は、若年~成人男性の報告が多く、

2回目接種後により多く発症し、

通常、ワクチン接種数日後に発症しています。

大部分の報告で、患者さんは療養に良く反応し、早期に症状改善、通常の日常生活に復帰しています。

症状には、胸痛、息切れ、動悸などがあります。

Myocarditis and Pericarditis After mRNA COVID-19 Vaccination | CDC

新型コロナワクチンの接種間隔

2021年07月22日

新型コロナファイザー製ワクチンの接種間隔

新型コロナワクチンの国からの供給が各自治体の希望量に満たない状況にあるなか、決められた間隔で2回目接種の予約が取れない場合があります。

ファイザー製ワクチンは、添付文書上「3週間の間隔をあけて2回接種する」用法で、「1回目接種より3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目接種をする」とされています。

WHOの2021.6/15付け中間勧告では、 ファイザー製ワクチンは、3-6週間の間隔をあけて2回接種するが「ワクチン供給に制限がある状況下の2回目接種に関する考察」のパートの記載として、

ハイリスクグループのワクチン接種率が高くなくワクチン供給に制限がある国においては、接種間隔を12週に伸ばしてハイリスクグループの1回接種率を上げる。

とあり、その根拠として、

1.Phase 3 trialsにおいて被検者は19-42日の間隔をあけて2回接種し、中和抗体価は一回目接種後上昇し、2回目接種によりさらに上昇して、95%有効性を示した。

3.Post second dose studiesでは、12週間までの接種間隔で中和抗体価は上昇した。

4.いくつかの国々では12週間の接種間隔が選択され、ワクチン導入後有用性研究で1回目接種より10週間までの有用性がアルファ株を含めて得られた。

5.1回接種のデルタ株に対する有用性はアルファ株に対する有用性より低いが、2回接種の有用性は両者で同等。

があげられています。

ワクチンの接種間隔は、添付文書の記載では「1回目接種より3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目接種をする」であり、治験では1回目接種より6週間までのデータ、特例承認後は12週間までのデータがあるようです。

Interim recommendations for use of the Pfizer–BioNTech COVID-19 vaccine, BNT162b2, under Emergency Use Listing (who.int)

新型コロナワクチンと子ども

2021年06月25日

日本小児科学会より、「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」として文書が学会HPに掲載されております。

新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)

要旨の一つとして、子どもを新型コロナウイルス感染から守るには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者等)への新型コロナウイルスワクチン接種が重要とあります。

これは、子どもへの感染源の多くは(家族も含めて)周りにいる成人であることから、子どもを感染から守るためには、周囲の成人が免疫を獲得することが重要と考えられるからです。

16歳以上の約4万人を対象とした国外の研究では、2回接種後のワクチン効果は95%で、発症を予防する高い効果が報告されました。また、英国の研究結果から無症状の感染を防ぐことも明らかになっていますので、ワクチン効果により周りの成人から子どもへの感染が予防できる可能性が期待されています。

まず、16歳以上のご兄弟も含めて、同居、あるいは接触機会の多いご家族、子どもに関わる業務従事者のワクチン接種が肝要に思います。

子ども(ワクチンの適応のある12歳~15歳)へのワクチン接種については、「重篤な基礎疾患のある子どもへの接種」と「健康な子どもへの接種」が分けて記載されています。

杉並 永福町 すずかわ循環器内科は小児科を標榜しておりませんので、恐れ入りますが診療の対象を高校生以上(16歳以上)とさせていただいております。